謝謝! 韻韻

発掘力と編集力

目次

  1. 概要
  2. 韻の発掘力
  3. 韻の編集力
  4. 編集の重要性
  5. どちらを伸ばすか
  6. 余談:音源における編集力
  7. 余談:発掘や編集の自動化
  8. まとめ
  9. 関連企画

概要

ライミングのスキルは、発掘力編集力の二つに大別できる。
前者は韻単体(パーツ)、後者は文章全体(レイアウト)の善し悪しに関係する。


韻の発掘力

発掘力は、韻を発見するスキル。

例えるならば、魚の卸業者。
仕入れ先の幅広さ、鮮度の良い魚を見分ける観察眼。
発掘の才能は、忍耐力語彙の幅広さと関係する。

韻を大量にリストアップする作業は、(時間さえ掛ければ)誰でもそれなりの水準まで辿り着ける。
極端な話、機械化が可能である。

重要なのは、その中から“使えるパーツ”を拾い上げるセンス。
これは各自の経験によって磨かれる。

また、ライミングの九割は手間暇、残りの一割はだ。

本当に優れた韻は、偶然の閃きで得られることが多い。
推敲時間に比例して、こうした幸運と出会う可能性も高まる。
チャンスを逸しないため、しっかりと発掘することは有効である。

先に述べた「優れた韻の条件」の五要素でいえば、発掘力は“意外性”“連鎖性”に関係する。


韻の編集力

編集力は、韻を配置するスキル。

例えるならば、寿司屋の板前。
ネタの美味しさを最大限に引き出す調理技術。
主に関係するのは、比喩力文章構成力である。

リストアップした韻を組み合わせる工程には、バランス感覚が求められる。
テーマに沿い、自然な文章の中で韻を踏むならば、使える単語は自ずと狭まっていくだろう。
どれだけスムーズに繋ぎ目を隠すか、馴染ませるかが編集の鍵である。

また、相性が悪いパーツ同士を何とかしてコーディネートするのも、編集力の見せ所といえる。
(フレーズ間で大きく内容の乖離した“スプリットライム”がその典型)

優れた韻の条件」の五要素では、編集力は“明瞭性”に関係する。


編集の重要性

繋ぎの例1

お前のラップは 高野豆腐 おれのラップは オーバードーズ

繋ぎを考えるとき、上記のようなインスタントな接続でも、それなりに成立する場合が多い。(※1)

例1では「お前のラップは」「おれのラップは」“繋ぎ”にあたる。

繋ぎの例2

しかし下記のように、もう一歩掘り下げた繫げ方もできる。

失恋の歌詞ばっかオーバードーズしてウェットに浸した高野豆腐

同じネタ(韻)であっても、繫げ方の工夫(※2)によってさらに美味しさを引き出せる。
例2では「失恋の歌詞ばっか」「してウェットに浸した」が“繋ぎ”にあたる。

二つのスキルのまとめ

  1. 高野豆腐と“何で”踏めるか(what)――という発掘力
  2. 高野豆腐とオーバードーズを“どう”繋ぐか(how)――という編集力

これらが韻のスキルを支える二本柱である。

※1 どんな言葉も無理やり連結できる、このテンプレートの汎用性もある意味ではすごいといえる
※2 工夫として代表的なものは、フレーズ間の文脈を連結させるための比喩法である


どちらを伸ばすか

韻を踏む技術がある程度のレベルに至ると、発掘力はほとんど横並びになりがちである。
自分らしさを表現するために、どこで差別化すればよいのか。

なお、ある程度のレベルとは“同音ライム子音一致率の高い韻(別記事にて説明)を使いこなせること”を想定している。

対策1 発掘力アップ

さらに発掘を推し進め、ブレイクスルーを図るアプローチ。

思い浮かぶ韻の数が少ない場合――たとえば、一つの素材に対して100~200個しか挙げられないという時期には、とことん掘り続けることでまだスキルアップの余地がある。
語彙不足を感じる場合もこちらに該当。

対策2 編集力アップ

十分に発掘できる力が付けば、次は、同じ素材をどうアレンジできるかという部分を伸ばす。

自然な文章を保ちつつ韻を盛り込むには、編集力の中でもとりわけ、韻の隙間をどんな表現で繋ぐかという馴染ませ力が重要になる。
一文単位で見た時に破綻を起こさず、自然な文章であるのは勿論として、複数の文章と文章が結び付き、歌詞全体がひとつのストーリーを形作ることが理想だ。

ここでは具体的にいうと、助詞接続詞の引き出しを増やすことが有効。
次に来る韻がどんな言葉であっても、限られた音数の中で自然に繋いでいけるようにトレーニングを行うとよい。
(“繋ぎグランプリ”などの縛りゲームも有効である)


余談:音源における編集力

音源作品の場合は、歌い回し(フロー)のバリエーションも編集力の一部といえる。

もしも同じ歌詞で自分以外の数名が歌うとしたら、自分だけの強みはあるだろうか。
共通の韻で戦っても勝てるような編集力は、各自の優位性につながる。

また、フローとは“繋ぎ部分の音数をどれくらい長くするか”“余白をどれくらい設けるか”という解釈の幅でもある。

部分ライムを除けば、韻を校正するフレーズは同じ音数であることが多い。
母音合わせや子音合わせの際、無意識に“音数合わせ”も行うケースが一般的なためである。

それを際立たせるため、繋ぎは不規則な詰め方にするのか。
定型のリズムを生むため、繋ぎも統一した音数にするのか。

こうした判断一つとっても、韻の“見せ方”のアレンジは無数に存在する。


余談:発掘や編集の自動化

大量の候補を挙げる力は発掘力、その候補からどの韻を採用するか判断する力は“発掘力と編集力のミックス”である。

先述したように、発掘力は機械化が容易だ。
いっぽう今のところ、“編集”の絡む部分は――すなわち、候補間の優先順位を判断する部分は――人間が得意とする作業である。
しかし今後、アルゴリズムの進化によって編集力の高い機械があらわれる可能性もある。

コンピュータによるライミングに関しては、別記事にて改めて述べる予定。
ひとつ確かなことは“独自性をもたないライミングはいずれ駆逐される”というシンプルな自然摂理だろう。


まとめ

アイデアを発掘力と編集力に二分割する考え方は、韻に限らず様々な創作の分野で同じことがいえる。

  1. 部分を見てクオリティを追求すること。
  2. 全体を見てバランスを整えること。

二つの力を両輪として活用し、発想を洗練させていく。
このような思考法に慣れれば、多くの分野で通用する“アイデア発見力”にも繋がるだろう。


関連企画

企画名 内容
繋ぎグランプリ 同じ“韻”を使って、“繋ぎ”を考える競作
(例)「才色兼備」
脚韻グランプリ 同じ“繋ぎ”を使って、“韻”を考える競作
フローグランプリ 同じ“韻”と“繋ぎ”を使って、“歌い回し”を考える競作
(例)「コンヴェルサツィオーネ」(繋ぎなし)
別解グランプリ 同じ“素材”を使って、“韻”を考える競作
(例)「競作スタジオジブリ」「artificial flower」

履歴

日付 内容
2017.7.19 新規作成
2017.11.1 音源における歌い回しについて追記
2017.12.6 全体的に見直し
2018.5.31 編集の自動化について追記
2018.8.1 公開用に清書
2018.8.10 細かい表現の修正
2018.10.16 関連企画に別解グランプリを追加

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