謝謝! 韻韻

素材先行法と交互継ぎ足し法

目次

  1. 概要
  2. 素材先行法
  3. 素材先行法(両面素材ライム)
  4. 交互継ぎ足し法
  5. 両面素材と交互継ぎ足し法の見分け方

概要

ここでは、韻の創作技法を“素材先行型”と“交互継ぎ足し型”の二つに分類し、それぞれの進め方を紹介する。

素材先行法

片方のフレーズを起点として、それに合うフレーズを発見あるいは生成する方法を“素材先行法”という。
前者のフレーズを“素材フレーズ”または“素材”と呼ぶ。
素材フレーズには、原則として手を加えない。

素材先行法の例

素材フレーズ 生成フレーズ
産み落とした 風味・音・舌
オードトワレ 黄土と荒れ
伝統芸能 出ん峠への
懸垂下降 センスいいカッコ

このとき、素材フレーズを上回る良質な生成フレーズが見つかるケースは少ない。

素材フレーズ 生成フレーズ
The Third Man 目指す三度目

素材フレーズの縁語など、うまく馴染むフレーズが発見できれば、生成フレーズの不自然さは和らぐ。
が、やはり素材フレーズに比べれば劣ったものとなる。

多くの場合、後から考え付いたものは質が低く、“素材フレーズ>生成フレーズ”の関係にある。


素材先行法(両面素材ライム)

上に述べた通り、素材ありきで書く以上、通常は“素材フレーズ>生成フレーズ”となる。
つまり、2フレーズで構成する韻はフレーズ間に優劣を感じさせやすい。

しかし、どちらが素材フレーズといわれても通用するケースが存在する。
このような韻は、素材と素材のペアになっていることから、“両面素材ライム”と呼ぶ。
素材を破壊せずに対となるフレーズを発見しており、分類上は素材先行法による韻の一種といえる。

発見は偶然に大きく左右される。

素材フレーズ 発見フレーズ
マウンテンロッジ 満天の星

両面素材ライムでは2フレーズが同等の素材感を備えており、“素材フレーズ≓発見フレーズ”の関係にある。

余談

素材先行法のうち片面素材と両面素材の見分け方はシンプル。
“どちらのフレーズを出発点として考えたか?”が容易に判別できるなら、通常(片面素材)の素材先行法である。
どちらとも決めかねるものは、優劣がないので両面素材の素材先行法である。
(しかし、この見分け方にも例外があるので後述する)


交互継ぎ足し法

何らかの素材フレーズからサーチを開始するが、素材改変しつつ進める方法を“交互継ぎ足し法”という。
素材先行法が素材に手を加えず、片側のフレーズだけを変更していくのとは対照的である。

交互継ぎ足し法では生成フレーズの修正に応じて素材フレーズを修正し、また素材フレーズの修正に応じて生成フレーズを修正する。
“こちらの枝を切りすぎたら反対側の枝も切る”というイメージで、双方のバランスを見ながら交互に整える。

交互継ぎ足し法によって生成された韻に“素材フレーズ”は残らない。
基本的に、どちらが素材フレーズであったのかは判別不可能となる。
(ある程度の推測は可能)

生成フレーズ1 生成フレーズ2
週毎日勤務 シュウマイにチキン

この韻の創作過程を細かく追っていけば、以下のようになる。

まず起点として「週毎日」を素材にし、韻をサーチする。
このとき、「シュウマイ」という候補が発見できたとしよう。

生成フレーズ1 生成フレーズ2
週毎日 シュウマイ

この時点では「週毎日」の末尾にある「にち」の部分が余っている。
これを満たすようにフレーズ2の側を継ぎ足していく。

生成フレーズ1 生成フレーズ2
週毎日 シュウマイ(にち)
生成フレーズ1 生成フレーズ2
週毎日 シュウマイにチキン

すると今度は「シュウマイにチキン」の末尾にある「キン」の部分が余ってしまう。
これを満たすようにフレーズ1の側を継ぎ足していく。

生成フレーズ1 生成フレーズ2
週毎日(きん) シュウマイにチキン
生成フレーズ1 生成フレーズ2
週毎日勤務 シュウマイにチキン

交互継ぎ足し型のライミングはこのようにして進められる。

さらに「シュウマイにチキン(む)」のように、継続してもよい。
両側のフレーズが好きな長さになるまで同様に行う。

なお、この例でいえば「シュウマイ(にち)」の時点で「シュウマイにチーズ」や「シュウマイにチクワ」など色々な選択肢を挙げやすい。
その場で最もよさそうなものを選択することになるが、後になって行き止まりにぶつかってしまったときは「シュウマイ(にち)」まで戻って選び直す――というケースもある。

参考

月曜スタートの週毎日勤務
買って腹ごしらえ シュウマイにチキン

例2

生成フレーズ1 生成フレーズ2
ガラクタ が楽(た)
生成フレーズ1 生成フレーズ2
ガラクタ が楽、楽しい
生成フレーズ1 生成フレーズ2
ガラクタ(のしい) が楽、楽しい
生成フレーズ1 生成フレーズ2
ガラクタの思想 が楽、楽し(そう)
生成フレーズ1 生成フレーズ2
ガラクタの思想 が楽、楽しそう

この例では、フレーズ2を「が楽、楽しい」にして進めた結果、フレーズ1が「ガラクタの詩」「ガラクタの恣意」のような気に入らない言葉しか選べなくなったので、少し戻ってフレーズ2を「が楽、楽しそう」に訂正している。

継ぎ足し作業は、両側フレーズの推敲を交互に行うことで偏りを減らし、どちらも同じくらい自然な表現に揃える効果がある。
したがって、交互継ぎ足し法で作られたフレーズの質は“生成フレーズ1≓生成フレーズ2”の関係にあり、印象として両面素材ライムに近い。

参考

ブーム超すと下火以下らしいけど韻にコストしたBからC&Sだ
ガラクタの思想 好きなモン書くのが楽、楽しそう!


両面素材と交互継ぎ足し法の見分け方

完成したラインの単語感、出来合い感に注目する。
「マウンテンロッジ」「満天の星」は出発点として着想しそうだが、「週毎日勤務」「シュウマイにチキン」は開始時にこの形で用意してあったとは考えづらい。
このように単語感(素材感)がないフレーズは、継ぎ足しながら作られたもの(生成フレーズ)であることが多い。

とはいえ、両面素材か交互継ぎ足し法かという違いは、読み手にとって関係のないことである。
重要なのは、“フレーズ1>フレーズ2”という質の劣化を感じさせず、“フレーズ1≓フレーズ2”を満たすペアの存在。
これを達成する手段が、純粋な閃きによるものか、地道な推敲作業によるものか、というだけの違いである。


履歴

日付 内容
2016.11.25 新規作成
2017.4.21 全体的に見直し
2018.8.28 公開用に清書
2018.9.13 細かい表現の修正

韻韻

from 韻韻

シュウマイにチキン...八宝菜に巻く小籠包...